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「裁判員の参加する刑事裁判」の開始に当たっての会長声明

1. はじめに

福島県弁護士会は,これまで,本日から開始される裁判員裁判制度には様々な問題点があることを指摘し,その改善を求めつつ,他方裁判所・検察庁とともにこの新しい制度のため準備を重ねてきたが,制度の開始に当たり,あらためて県民各位の御理解を頂きたく,以下のとおり意見を表明する。

2. 刑事裁判の目的と大原則の存在,被告人の憲法上の権利

刑事裁判の目的は,公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ,事案の真相を明らかにするところにある。そして,このような刑事裁判は,国家が,刑罰により人々の基本的人権である生命,身体の自由,財産を奪おうとするものであるから,国家の側(検察側)が,犯罪事実を合理的な疑いを容れない程度に証明しなければならない。そこから,刑事裁判にあっては,人々は有罪判決が出されるまでは無罪と推定されるという「無罪の推定」,「疑わしきは被告人の利益に」という大原則が導かれるのである。そしてこの大原則は,勿論裁判員裁判でもあてはまるのであるが,残念ながらその理解は未だ充分ではないように見受けられる。そこで県民各位におかれては,まず,この大原則に対する認識を一層深めて頂きたい。

また,被告人には,憲法上,資格を有する弁護人を依頼する権利が保障されており,在野法曹たるわれわれ弁護士にとっては,被告人の防御を尽くすことが刑事裁判における重要な職責である。このことは裁判員裁判でも全く同様であって,このような被告人の憲法上の権利や弁護人の職責についても県民各位に充分御理解を頂きたい。

3. 福島県の特徴と今後の課題

ご案内のとおり,福島県は県土が大変広いのであるが,このように面積の広い県でありながら,裁判員裁判が当面中通り地方の福島市と郡山市の裁判所でしか開始されないということは極めて大きな問題である。なぜならば,これにより,われわれ弁護士だけではなく,相双,会津,そしていわき地域に住む県民各位は,遠隔の地である福島市や郡山市で行われる裁判員裁判に出頭しなければならないからである。従って,このような事態は出来るだけ早く解消されるべきであり,福島県弁護士会は,一日も早く,裁判所の支部が存在する会津若松市,いわき市,さらにその他県内各地において裁判員裁判が実施されるよう国に対し強く求めるものである。

4. 結び

福島県弁護士会は,この新しい制度が,県民各位のご理解とご協力,そして関係機関との協働により,様々な問題や困難を克服し,また実施後の効果的な検証作業を通じ,地域の実情に根ざした制度として定着していくよう努力するものである。

2009年(平成21年)5月21日
福島県弁護士会
会長 平松 敏郎

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