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消費者庁長官及び消費者委員会の人事に関する会長声明

1. 本年5月29日、消費者庁設置関連三法が成立し、消費者庁の設置が現実のものとなることが決まった。

消費者の利益の擁護及び増進等に関する行政事務を行うことを任務とする消費者庁の設置は、従来の産業育成を中心とした行政から、消費者の目線に立った行政への大きな転換を図るものと高く評価できるものであり、消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けた大きな一歩となる。当会としてもこれを大いに歓迎する。

また、消費者委員会の設置についても、消費者庁と同格の位置づけがなされ、消費生活への見識を有する委員により構成される独立した第三者機関とされた点で、同様に歓迎できるものである。

2. ところで、消費者庁設置関連三法の審議にあたっては、当初の政府案に対し、衆議院における超党派議員の修正により、内閣府に消費者庁からの独立性を有する消費者委員会を設置することで、消費者の目線に立った消費者行政の実現という消費者庁設置関連三法の趣旨を全うしようとしたという経過があり、政党の枠を超えて消費者の目線から議論がなされた。

また、消費者庁設置関連三法の決議にあたっては、消費者庁及び消費者委員会が消費者の利益の擁護及び増進のため、各々の独立性を堅持しつつ、適宜適切に協力して職務にあたること、消費者委員会の委員長及び委員は、すべて民間から登用すること等、23項目にもわたる異例の附帯決議がなされた。

3. かかる消費者庁及び消費者委員会の位置付け、消費者庁設置関連三法の審議経過、附帯決議の趣旨からすれば、消費者庁については官の論理ではなく消費者の目線に立った行政運営をし、消費者委員会については消費者庁を不断に監視することを期待されていることが明らかである。

そして、このような消費者庁及び消費者委員会という組織の実効性を高め充実したものとするためには、そこにいかなる人を得るかが極めて重要である。仮に,従来型の官の論理に立った人事が行われるとすれば、消費者の目線に立ち、これまでの縦割り行政を打破し消費者問題を横断的に行うという消費者庁及び消費者委員会の設置の趣旨に明らかに反するものといわざるを得ず、結局はその目的を十分に達せず、その不利益は消費者のもとに跳ね返ってしまうこととなる。

かかる観点からすれば、消費者庁長官、消費者委員ともに、消費者の目線から消費者問題にかかわった経験の深い者が選任されるべきであり、反対に、産業界の利益代表や消費者問題を類型的に発生させている事業分野と関連のある者は選任されるべきではない。

また、消費者委員長については、消費者庁及び消費者委員会設置法第12条に規定されているとおり、かかる委員の中からその互選により選任されるべきことは当然である。

さらに、かかる前提の下、消費者庁長官等の選任については、真に消費者の目線を有する者か否かを十分に見極めるため慎重に行われるべきであって、これを拙速に行うべきではない。

4. この点、政府は、消費者庁の初代長官及び初代委員長に特定の人物らを充てることを前提に、本年8月1日付にて、当該人物らをそれぞれ消費者庁の設立準備顧問及び消費者委員会の設立準備参与代表に充てる人事を発令したが、拙速の感が否めない。蓋し、当該人物らが、真に消費者の目線から消費者問題にかかわった経験の深い者であるかについての議論が十分になされたとは思われず、当会としては強い危惧の念を抱かざるを得ないからである。
 

5. 以上より、当会は、政府に対し、以下の各事項を要求する。

(1)消費者庁長官及び消費者委員会委員については、本年8月1日付の人事に関わらず、消費者の目線から消費者問題にかかわった経験の深い者から、適切な人物を選任されたい。
また、上記選任にあたっては拙速に陥ることなく、消費者庁及び消費者委員会設置の趣旨を十分に反映させるべく慎重に判断されたい。

(2)消費者委員会の委員長については、本年8月1日付の人事に関わらず、消費者庁及び消費者委員会設置法第12条の規定に従い、委員の自由な意思・議論に基づき、その互選により選任されるよう、事前に委員長候補者を特定することのないようにされたい。

以上

2009年(平成21年)8月31日
福島県弁護士会
会長 平松 敏郎

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