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各人権条約に基づく個人通報制度の導入及びパリ原則に合致した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議

わが国は,1979年(昭和54年)に市民的及び政治的権利に関する国際規約(国際人権(自由権)規約)を批准し,同規約は国内法的効力を有するに至った。そして,批准から31年あまりとなる今日までの間,女性差別撤廃条約,子どもの権利条約,人種差別撤廃条約,拷問等禁止条約などが発効して,同じく国内法的効力を有するに至っている。

しかしながら,国際人権(自由権)規約その他各人権条約が,法規範として司法・行政等の場で十分に機能しているとは言えず,わが国の基本的人権の保障は,刑事手続,被拘禁者の処遇,女性の地位,在日外国人の人権を含む様々な分野において,国際人権(自由権)規約,その他各人権条約の求める国際人権保障の水準に達しているとは言いがたい状況である。

この状況を打開し,わが国の基本的人権の保障を各人権条約の求める国際人権保障の水準に前進させるためには,各人権条約が定める個人通報制度を導入すること及び国連の「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」に合致した,政府から独立した国内人権機関を設置することが極めて有効である。

まず,個人通報制度とは,各人権条約で保障された権利を侵害された人々が国内で司法手続等の手を尽くしても権利の回復を実現できない場合に,国連の各人権条約委員会に対して直接救済の申し立てができる手続である。この制度が導入されれば,各人権条約委員会が,人権侵害の有無を審議し,人権侵害があれば,直接批准国の政府に対して改善を促すこととなる。そのため,国内において権利の回復が実現できなかった場合にも国際的に人権侵害状況が監視されることとなり,個人の権利救済が期待できる。

次に,国内人権機関とは,①人権侵害の救済,②立法・政策提言,③人権教育の3つの機能をもつ,政府から独立した機関をいう。そしてパリ原則は,歴史的に最大の人権侵害者は国家権力であることに鑑み,政府からの独立性確保のために①法律上及び運用上の自立を通じた独立性,②財政上の自立を通じた独立性,③任命及び解任手続を通じての独立性,④構成を通じての独立性を求めている。国内人権機関が設置されれば,裁判制度などとは別に,人権侵害に対する実効的な救済が得られることになる。

よって,当会は,わが国において国際人権基準に従った人権保障を推進して,真の意味での人権保障を実現するため,各人権条約に定める個人通報制度の導入及びパリ原則に合致した,真に政府から独立した国内人権機関の設置を政府及び国会に対して強く求める。

以上のとおり決議する。

2011年(平成23年)02月26日
福島県弁護士会

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