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日本司法支援センターの業務の特例に関する法律の有効期限の再々延長を求める会長声明

 東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律(以下「震災特例法」という。)は,2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災という未曾有の大災害によって深刻な被害を受けた被災者の司法アクセスを容易ならしめ,災害に伴う様々な法的紛争解決のために法的手続や弁護士等の提供する法的サービスを円滑に利用することができるようにすることを目的として,2012年(平成24年)に3年間の時限立法として成立した。その後,震災特例法は,被災地の地方公共団体や,日本弁護士連合会,東北弁護士会連合会などが延長を求めて活動をした結果,2015年(平成27年)に3年間,2018年(平成30年にさらに3年間延長されてきた。この震災特例法により,被災地に居住していた住民は,その資力に関係なく,弁護士等の専門家による無料での法律相談を受けることや,法的手続等にかかる費用(弁護士報酬等)の立替払を受けることができるようになり,これまで,災害に伴う法的紛争の解決を通じて,被災者の生活再建や地域の復興に寄与してきた。ただ,現状では2021年(令和3年)3月31日をもって,震災特例法は施行期限満了を迎えることとなる。
 しかし,被災地における無料法律相談のニーズは未だ高く,2018年度においても震災法律相談援助の件数は全国で5万4759件に上っているところであり,再延長にかかる施行期限満了を迎えたとしても,直ちにこのようなニーズがなくなるとは考えがたい。1995年(平成7年)の阪神淡路大震災に関しては,発生から20年以上を経過した現在においても,いわゆる借上げ復興住宅に入居して生活している被災者が自治体より立退きを求められるという問題が生じていると報道されており,単に災害から一定期間が経過したというだけで,被災者固有の法的紛争やその解決の需要が消滅するわけではないのである。
 もっとも,震災法律相談援助の利用については震災起因性を要件としていないため,全国的には,震災法律相談援助全体に占める震災起因性のある紛争についての法律相談が減少しているとも考えられる。しかし,特に,原発事故の賠償等についての相談(震災起因性があることは疑いない)のニーズは未だ高いと考えられる。原発事故被害についての損害賠償については,東京電力ホールディングス株式会社(旧東京電力株式会社)に対する直接の賠償請求だけでなく,原子力損害賠償紛争解決センターに対する和解仲介手続(ADR)申立てや全国各地の裁判所における訴訟提起など,極めて多数の法的紛争が存在するが,それらの法的紛争が全体として終局的解決を迎える目途は,未だ立っていない。
 原子力損害賠償請求権の時効については,いわゆる原賠時効特例法により「損害を知った時から10年」とされているが,損害の発生時期など個別の事情によって時効の起算点は異なり,また,東電による債務承認や原子力損害賠償紛争解決センターへの和解仲介申立等による時効中断(いわゆる原賠ADR時効中断特例法)などもありうるところであるから,原発事故から10年(すなわち現時点における震災特例法の施行期限である2021(令和3)年3月)の経過をもってすべての損害が時効完成により消滅するものではなく,現時点における震災特例法の施行期限満了後も,特に原子力損害賠償の問題をめぐっては,未解決の紛争が極めて多数存在することが容易に想定されるところであり,かかる未解決の紛争の解決のために,被災者(被害者)が震災法律相談援助や代理援助を利用する必要は高いものと考えられる。
また,震災特例法の再々延長に関しては,当会が,福島県並びに県内59市町村全てを対象としてアンケートを実施した結果,回答があった38自治体のうち89%を超える34自治体から,震災特例法の再々延長を希望する回答が寄せられている。
 このような状況のもとで,このまま震災特例法が失効すれば,東日本大震災及び原発事故の甚大な被害から立ち直り,被災前と同様の平穏な生活を取り戻そうとしている被災者・被害者の生活再建と,被災地の復旧復興に水を差すことになることは明らかである。
 そのため,当会は,国に対し,震災特例法の再々延長を強く求めるものである。

2019年(令和元年)10月16日
福島県弁護士会
会長  鈴 木 康 元

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