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二本松市の認可保育所における虐待事件を受けての会長声明

二本松市の認可保育所における虐待事件を受けての会長声明

 

令和2年11月18日、福島県(以下、「県」という。)は、二本松市(以下、「市」という。)の認可保育所「すまいるえくぼ」(以下、「園」という。)における元園長による園児への虐待行為を確認したとして、園に対し、改善命令を出した。

報道や県の発表によれば、元園長は、園児が着ている服の裾を掴んで持ち上げ、大きく揺さぶり床に落としたり、体などを繰り返し蹴ったりしていたほか、「ばか」「帰れ」などの暴言を日常的に行っていたとのことであり、現在二人の園児に対する暴行罪で起訴され、3度目の勾留中である。

児童虐待は、子どもに対する重大な人権侵害であり、許されないものであるが、特に、保育所における児童虐待は、保育所が児童福祉の理念の基に、児童の福祉の向上を図るための児童福祉施設の一つであり、乳幼児が生涯にわたる人間形成の基礎を培う極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごすところであることなどから、絶対にあってはならないし、見逃されてはならないものである。

児童福祉法は、このような保育事業の特殊性に鑑み、実施責任の主体を市町村としたうえで、保育所の設置や運営に関する基準にかかる条文を設け、都道府県知事に保育所の認可権限や調査・改善命令にかかる権限を付与するなどして保育所での保育が一定の水準を確保できるように規定している。

ところが、報道によれば、少なくとも平成31年4月ころから、県や市には、虐待に関する情報が寄せられ、県は2回にわたり調査を行ったにもかかわらず、元園長に対する聞き取りしか行わなかったため、令和2年11月まで、虐待の事実を確認できなかったとのことである。

そもそも、今回の職員に対する調査においては、ほぼすべての職員が元園長による虐待の事実を認めていたというのであるから、県が児童福祉法に定められた自らの権限に基づき、抜き打ち調査や複数の関係者への聞き取りなどの適切な調査を当初から実施していれば、もっと早期に虐待を発見できた可能性は極めて高く、県の責任は重大と言わざるを得ない。

また、市に対しても同様に虐待に関する情報が寄せられていたというのであるから、本来、保育事業を実施すべき責任を有する市としては、委託先である保育所においても設置運営基準等法令の基準に従った適切な養育がなされるよう是正すべき責務があったというべきであり、これによっても改善が図られない場合には委託契約を解除する等適切な措置を取る必要があったというべきである。しかしながら、少なくとも報道による限り、市が今回の件に関し、適切な対応をとった形跡は見受けられず、この点にかかる市の責任も重大であると言わざるを得ない。

そこで、本会は、県内の保育所において、再びこのような事態が生じることを防止し、本県のすべての子どもが、保育所での虐待の被害から免れ、その最善の利益が確保されるよう、県及び市に対し、本件に関し、第三者による検証委員会を直ちに設置し、事実関係について検証を行った上で、その内容を公表すること及び検証結果を踏まえ、再発防止策を適切に講じることを求める。

 

2021年(令和3年)3月11日

 

福島県弁護士会

会長  槇   裕 康

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