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東京電力ホールディングス株式会社の総合特別事業計画変更認定を受け、あらためて消滅時効の援用をしない取り扱いを求める会長声明

東京電力ホールディングス株式会社の総合特別事業計画変更認定を受け、あらためて消滅時効の援用をしない取り扱いを求める会長声明

 

2021年(令和3年)4月21日、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という)の新々・総合特別事業計画(第三次計画。以下「総合特別事業計画」という)が変更認定された。

福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という)から10年が経過し、「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律」(以下「特例法」という)にもとづく消滅時効が、今後、順次完成することから、近時、消滅時効に対する東京電力の姿勢が特に注目されてきた。

本会はこれまで、時効再延長のための再度の立法措置を求めるとともに、東京電力に対して、消滅時効を援用しない立場を明確にするよう求めてきた。

他方、東京電力ではこれまで、代表執行役社長が福島県原子力損害対策協議会に対し「実質的には時効を援用し御請求をお断りすることはない」と回答するなど、時効を援用しないとも理解しうる態度を示していたところである。

しかし、総合特別事業計画には、消滅時効につき、改めて、「賠償請求においては、時効を理由に一律にお断りすることはせず、時効完成後であっても被害者の方々の個々の御事情について十分に配慮しつつ、引き続き真摯に対応する」との記述が盛り込まれたことが今回明らかとなった。

今後、本件事故被害者が損害賠償を請求するにあたり、東京電力が消滅時効の援用をするか否かを判断するために「個々の御事情」を説明することが求められるようなことがあれば、被害者の不安や諦め、過度な立証の負担を招き、また、東京電力の判断次第では、たしかに一律には時効を援用しないものの、原則と例外が容易に逆転することになりかねない。

本件事故は、極めて多数の被害者が存在し、個々の被害者に性質や程度の異なる被害が発生し続けているという特殊性を有する。立証の困難さや東京電力の硬直的な態度によって紛争は長期化し、損害賠償を請求する各地での集団訴訟もいまだ確定に至っていない。これらの事情を踏まえれば、「個々の御事情」を問うまでもなく、特例法が当初想定した10年以内に賠償請求しなかった者につき、権利の上に眠る者との非難があたるものではない。

当会は、今後も東京電力に対し、消滅時効の援用をしないことを貫徹するよう求め、現実に東京電力がどのような対応をとるかを継続的に監視するとともに、あらためて、最後の1人に至るまで被害者の支援に努めていく。

 

2021年(令和3年)6月8日

福島県弁護士会

会 長   吉津 健三

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