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立谷秀清相馬市長の差別発言等に対し抗議する会長声明

立谷秀清相馬市長の差別発言等に対し抗議する会長声明

 

1 全国市長会長を務める相馬市の立谷秀清市長が、2021年10月28日、福島市で開催された連合福島の定期大会において少子化対策に言及する中で、「男性の年収と婚姻率は比例する。女の人ってそうなんだと思うような結果が出る。年収が多ければ婚姻率が高い」「労働分配率を上げて、男性の所得、女性に悪いけど、男性の所得を上げていかないと人口問題は解消しない」と発言したとの報道がなされた。

この点、立谷市長は上記発言について、一応の謝罪をしているようではある。しかしながら、このような男女賃金格差を広げる差別的政策を容認する発言は、あらゆる男女差別をなくそうとする現代社会の方向性に真っ向から反するものである。とりわけ、男性が女性を養うべきであるという男性稼ぎ主モデル、ひいては性別役割分業を前提としている点は、賃金格差問題解消にかかる日本社会の長年に亘る取組みを根底から否定する考えにほかならず、到底容認できないものである。

さらに当該発言は、婚姻したら女性は子を産むべきという考えが背景にある点でも、婚姻を望まないカップルや、婚姻せずに子育てをするカップル(夫婦別姓を望む男女を含む)、子を望まないカップルといった多様な生き方や性の在り方を否定するものであり、基本的人権の観点から看過できないものである。

また、このような発想はレズビアンカップル、シングルマザーなど婚姻していない女性への支援を軽視することにもつながりかねない点でも問題を含んでいる。

2 さらに報道によれば、立谷市長は、連合の芳野友子会長についても、「今度の美人会長も楽しみにしている」と発言したとのことである。

かかる立谷市長の発言は、業務や能力と関係のない容姿により人を判断するものであり、偏見や差別を助長するものである。

3 昨今のコロナ禍において、女性労働者へのしわ寄せは大きく、その格差が問題となっている。令和2年度の自殺者数においても、男性の自殺者数が微減だったのに対し、女性の自殺者数が急増しており、令和3年版厚生労働白書では、コロナ禍における女性の雇用問題もその一因であると分析されている。

立谷市長は、単に市長であるにとどまらず、全国市長会長をも務める立場にある者であり、その発言が社会に与える影響は大きい。そのような立場の者が、昨今の女性の置かれた厳しい状況を前に、上記のような男女の社会格差、賃金格差を容認する、あるいは偏見や差別を助長する発言は、許されるものではない。

当会は、今般の立谷市長による差別発言に対し抗議するとともに、あらゆる差別や偏見の解消を目指していく所存である。

 

2021年(令和3年)11月10日

 

福島県弁護士会

会長   吉 津  健 三

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