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「谷間世代」の不平等の速やかな是正措置を求める会長声明

「谷間世代」の不平等の速やかな是正措置を求める会長声明

 

戦後,日本国憲法下で司法修習制度が開始された1947年(昭和22年)から,司法修習生に対して,国から給費が支給されてきた。この給費制は,法の支配を行き渡らせ,国民の権利擁護を実現するための社会の人的インフラとして,法曹が果たす役割の重要性に鑑みて,司法修習生に修習専念義務(裁判所法67条第2項)を課すとともに,司法修習に専念できる環境を整えるために採用されたものである。

しかし,財政的負担等を理由に,2011年(平成23年)11月から,この給費制が廃止されて無給となり,代替措置として,希望する司法修習生に対して,国から司法修習に必要な資金を貸与する制度が設けられた。この貸与制のもとでも,司法修習生は修習専念義務を課され,原則として兼業が禁止されており,司法修習に必要な費用は,自己負担とせざるを得なかった。そのため,貸与制のもとで司法修習を行った司法修習生の多くは,一人当たり平均で約300万円の貸与を受けている。また,親族からの借入れやそれまでの蓄えの利用等によって,貸与を受けなかった者もいる。これらの事情から,司法修習生は,書籍代も節約して,修習に臨まざるを得ないような状況が生じていた(新第65期司法修習生に対する生活実態アンケート資料による)。このように,給費制の廃止により,司法修習生は,重い経済的負担を負い,極めて不安定な立場となった。司法試験に合格したものの,経済的理由により,司法修習を辞退する者も現れていた。

このような事態を受け,2017年(平成29年)4月に裁判所法の一部を改正する法律(平成29年4月26日法律第23号)が成立し,同年11月1日以降に採用された司法修習生(第71期以降)に対して修習給付金の支給が行われている。この修習給付金制度は,基本給付金(月額13万5000円)に加え,必要に応じて,住居給付金(3万5000円)及び移転給付金が支給されるものである。この支給額の妥当性については,今後の検討が必要ではあるが,司法修習生の経済的負担が軽減され,貸与制の問題点を少なからず改善したものであると評価することはできる。

しかし,無給・貸与制のもとで修習を行った司法修習生(第65期から第70期)に対しては,上記の修習給付金制度を遡及適用しないものとされている。そのため,特定の期間に採用された司法修習生は,従前の給費制に基づく給費も,新たな修習給付金制度に基づく給付金も受けられず,経済的に不平等な状況に置かれており,いわゆる「谷間世代」の不平等の問題が生じている。

この「谷間世代」の者も,司法修習終了後に,社会の人的インフラとして公益的な役割を果たしている点は,他の世代と何ら変わるところがない。しかし,上記の無給・貸与制のもとで修習を行ったことにより発生した,貸与金の返還債務等の経済的負担や,他の世代との間の不平等感が,今後,公益的活動に,積極的かつ継続的に取り組んでいくことに対する妨げとなりかねない。「谷間世代」の者は,全法曹の約4分の1(約1万1000人)を占めているところ,これらの者による,幅広い分野における公益的活動が憚られることのないよう,不平等な経済的負担を是正することが必要不可欠である。

そして,「谷間世代」の初年度に司法修習を行った第65期司法修習修了生の初回の貸与金返還期限は,本年7月25日に差し迫っている。

したがって,当会は,国に対し,修習給付金相当額を一律給付する等の方法により,「谷間世代」の者が被っている不平等の是正措置を速やかに講ずることを求める。また,暫定的な措置として,上記是正措置が講じられるまでの間,貸与金の返還期限を猶予する措置を講ずるように求める。

 

2018年(平成30年)7月11日

福島県弁護士会

会長  澤 井  功

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