上限金利引き下げにおける特例措置に反対する緊急会長声明
貸金業制度及び出資法の上限金利の見直しを検討していた金融庁及び法務省は、9月5日、自由民主党金融調査会貸金業制度等に関する小委員会で、いわゆる貸金業規制法の改正案の検討内容を明らかにした。この検討内容では、一方、金融庁の監督権限の強化等を盛り込んではいるものの、他方、
1. 改正法の施行日まで1年、上限金利引き下げまでの経過期間を3年、特例金利を認める期間を最長5年とし、計9年間はグレーゾーン金利が存続する
2. 30万円または50万円までの「少額短期特例」、500万円までの「事業者向け特例」として、いずれも年利28%の高金利を認める
3. 物価上昇を理由に利息制限法の金利区分を変え、一部の借入金額については現行法より金利を引き上げる
というものであり、改革を骨抜きにする内容を含んでいる。
しかし、今回の法改正の目的は、最高裁判所が貸金業規制法43条(グレーゾーン金利)の適用を否定して利息制限法による債務者救済を図る判決を相次いで示したことを踏まえ、深刻な多重債務問題を解決するために行うものである。
このことは、自由民主党・公明党の「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」や、金融庁「貸金業制度等に関する懇談会」で確認されてきた。しかも、8月24日に開催された同「懇談会」では、特例高金利の導入に反対の意見が大勢を占めた。
また、高金利引き下げの署名は300万人を超え、39都道府県、880を超える市町村議会が、高金利引き下げの意見書を採択している。
このような状況の中で、長期にわたって「グレーゾーン金利」を存続させたり、利息制限法の制限を超える「特例高金利」を新たに導入することは、同「懇談会」の意見を無視するとともに、高金利の引き下げを求める国民の声に逆行するものである。
現に、内閣府政務官として上限金利の見直しを進めてきたものの、金融庁の特例案に抗議し辞任した後藤田正純衆議院議員は「懇談会にも与党合意にも全くない数字がいきなり浮上してきた」と指摘している。金融庁案は国民を向いたものではなく業者側への配慮から作成されたものであることが明らかとなっている。
報道によれば金融庁は、こうした事態を受け、特例金利を認める期間を2年短縮し、3年間とする方向で調整に入ったとのことである。しかし、この案でも、最大7年間はグレーゾーン金利が存続することとなり、到底容認できるものではない。
そこで、当会は、政府及び国会に対し、生活破壊をもたらす深刻な多重債務問題の解決のため高金利の引き下げを切望する国民の声を裏切ることなく真摯に制度改革にあたるよう、以下のことを求めるものである。
1. 金利の見直しにあたり、「少額短期特例」、「事業者向け特例」等の特例高金利を設けないこと
2. 出資法の上限金利を直ちに現行利息制限法所定の金利まで引き下げること
3. 貸金業規制法第43条のみなし弁済規定を改正法施行時に即時廃止すること
4. 保証料などの名義での利息の脱法を認めないこと
2006年(平成18年)9月12日
福島県弁護士会
会長 岩渕 敬