割賦販売法改正に関する会長声明
近年、高齢者に住宅リフォーム工事や呉服・寝具等の高額な契約をさせる悪質商法が社会問題化した。これらの契約にはクレジットが利用されている事例が多く、本県でも、真珠販売の被害が発生している。特に、年金生活者がこうした被害に遭って、預貯金の全てを失ったうえに、多額のクレジット債務を抱え、その支払のために年金担保融資を受けたり、消費者金融からの借り入れをして、生活が困難となっている例も多い。
2006年(平成18年)6月7日、産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会(以下、「小委員会」という)は、「クレジット取引にかかる課題と論点整理について」(以下、「論点整理」という)をまとめ、クレジット取引の適正化の問題点を指摘した。この論点整理は、消費者保護の観点から、悪質な勧誘販売行為を助長するような不適正与信の排除に向けたクレジット事業者の対応や法的責任について検討すべきであるとしている点で、評価できるものである。
しかしなお、その具体的内容は不明確であるので、クレジット被害の防止のためには、少なくとも次の内容を盛り込んだ割賦販売法の抜本的な改正を行うべきである。
第1に、信販会社の加盟店管理義務を法律上に明記し、違反した場合の制裁措置として、民事上の責任も定めるべきである。悪質商法にクレジットが使われる原因として、信販会社による販売店(加盟店)の管理が不十分なことがある。クレジット取引は、販売契約と与信契約が密接不可分となっており、信販会社は販売店の営業活動によって利益を得ている関係にある。販売店とこのように密接な関係にある信販会社は、クレジット被害防止のため、販売店の履行確実性等を審査・管理すべきであって、購入者に対しても、販売店と共同して責任を負うべきである。
第2に、抗弁対抗の効果を、未払金の支払停止のみならず、既払金の返還請求権にまで拡張すべきである。現行割賦販売法30条の4は、抗弁の対抗の効果として、未払い金の支払停止しか規定していない。しかし、どの時点で問題が発覚したかによって購入者の負担が異なってしまうことには合理性がなく、かえって信販会社は問題が発生するまで販売店の営業活動を容認することによって利益を得ることになってしまい、被害拡大の一因ともなっている。したがって、加盟店管理義務を徹底する上でも、抗弁対抗の効果として既払い金の返還義務を認めることが必要である。
第3に、信販会社に対し過剰与信を禁止し、その違反に対して行政上の措置のほか、請求権の制限などの民事的効果を定めるべきである。現行割賦販売法38条は、過剰与信について規定しているものの、制裁措置のない訓示規定にとどまっており、全く実効性がない。過剰与信の結果、多重債務に陥いってしまう高齢者や若年者が多い。これら多重債務者を発生させないためには、法律上、信販会社に対して過剰与信の禁止を明文化し、その違反に対しては、行政上の措置だけでなく、請求権の制限などの民事的制裁をも明文化すべきである。
以上のとおり、当会は、悪質な勧誘販売行為を助長する不適正与信の排除のため、割賦販売法の抜本的改正を求めるものである。
2006年(平成18年)10月24日
福島県弁護士会
会長 岩渕 敬