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放射性物質が付着した廃棄物の適正処理を求める会長声明

1. 東京電力福島第一原子力発電所(以下、「第一原発」という。)における冷却機能喪失事故の発生から2か月が経過し、事故発生後に第一原発原子炉から放出された放射性物質の多くは、地表面などに降下し、土壌や落ち葉、雑草などに付着堆積し、一部は植物中に蓄積しており、また一部は雨水の流路を通じて下水に混入し処理施設の汚泥にて蓄積している状態にある。

このような状態にあることは、福島県が2011年4月5日から6日にかけて実施した福島県学校等環境放射線土壌モニタリング実施結果や、文部科学省が実施している陸土及び植物試料の分析結果、福島市にある下水処理施設の汚泥からも1キログラム当たり44万6000ベクレルという高濃度の放射性セシウムが検出された事実等から明らかである。

そして、上記の土壌モニタリング結果からは第一原発から約100キロメートル離れた会津若松市の小学校土壌からもセシウム134及び同137が検出された事実からみて、第一原発から放出された放射性物質は、福島県内の広い範囲に拡散している状況にある。

2. このように、福島県内の広範囲において地表面や植物などに放射性物質が付着堆積し、これらの一部が雨水に混入している状態にある中、屋外活動が盛んになり、また、気温が上昇していく時期を迎え、小中学校や自治会など各所で除草や雨水溝の清掃活動などが行われている。

そして、これらの清掃活動により集められた雑草や落ち葉などは、現在、ゴミ袋などに詰められ、可燃ごみとして各自治体のごみ焼却施設に搬送され、焼却処理がなされていると思われる。

しかし、地表面や植物などに付着していた放射性物質が、これらの清掃活動などにより、放射性物質が付着した廃棄物として集積され、各自治体における一般家庭ごみと同様のルートで不用意に処理される場合、廃棄物の収集および処理に従事する作業員が放射線に被ばくするおそれがある。

また、放射性物質が付着した廃棄物が、一般家庭ごみと混じって焼却処理される場合には、焼却場から放射性物質の生活環境への再拡散を招くおそれもある。

廃棄物に放射性物質が付着している場合、廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、同法に定める「廃棄物」は放射性物質及びこれによって汚染された物質を除くものとされており(同法2条1号)、法律上は通常の廃棄物処理の方法で処理し焼却することはできない。

そして、放射性物質に汚染された物についての対策は、原子炉等規制法35条にその定めがあるだけで、今回のように広く生活環境が放射性物質により汚染された場合の具体的な対策・措置については、なんら制度が存在していない。

国は、福島県浜通り及び中通り地方における放射性物質が付着した災害廃棄物についてはようやく対処を始めたものの、清掃活動のような住民の日常生活から生じる廃棄物に放射性物質が付着していた場合の措置については何ら講じていない。

国が、早急に清掃活動のような住民の日常生活から生じる廃棄物の処理に関する指針を策定すると共に、指針が策定されるまでの間について適切な措置をとらなければ、放射性物質の環境中への再拡散など、原子力災害の拡大を招来してしまうことになりかねず、廃棄物の収集等に関わる作業員を含めた地域住民の、生命、身体の安全という人権としての根源的な法益を侵害するおそれがある。

3. 以上から、当会は国及び福島県に対し、早急に以下の措置を講じるよう求める。

(1)福島県内において、放射性物質による生活環境への汚染が拡散している状況を踏まえ、廃棄物処理に関する分別基準を見直し、放射性物質に汚染された廃棄物とそれ以外の廃棄物との分別基準及びその方法、収集及び運搬の方法、放射性物質に汚染された廃棄物の処理方法等に関する指針を速やかに策定すること。

(2)上記(1)の指針が策定されるまでの間、一般廃棄物中に放射性物質に汚染された廃棄物が混入することを避けるため、一般廃棄物の収集等にあたる市町村に対し、廃棄物の収集に際して放射線の計測を行うなど適切な措置を講じるよう指導し、これを物的及び人的側面の両面から支援すること。

(3)災害廃棄物以外の廃棄物についても、放射性物質が付着したものについては、放射性物質の再拡散を防止するため、適切な処分場の調達など実現可能な措置を速やかに検討し、上記(1)の指針策定に合わせてこの措置を実施すること。

2011年(平成23年)05月30日
福島県弁護士会
会長 菅野 昭弘

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